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高齢者のための養生訓
現在、テレビで健康を扱った番組の、無い日は無いくらい盛んです。nhkのきょうの健康、たけしの、みなの家庭の医学、とか、ためしてガッテンなども、健康物が、多く放送されています。病気の怖さを、必要以上に誇張したものや、マユツバものも有りますが、何々が、体にいいと放送されると、次の日にはスーパーで、売り切れるそうです。そういう健康番組の元祖の、本があります。戦前生まれの,方は、聞いたことがあると思いますが、貝原益軒の養生訓です。
貝原益軒は、九州.博多の黒田藩の、儒学者です。1713年に書かれました。1713年とは、赤穂浪士が吉良上野介を,討ってから、11年後のことで、暴れん坊将軍事、吉宗が、将軍になる3年前のことです。全8巻からなる養生訓は、健康で長生きするには、如何したらいいかを書いた本です。江戸時代は、平均寿命が、50歳に遠く及ばない時代です。日本人の平均寿命が、50歳を超えたのは、昭和30年ごろの話です。貝原益軒は、上寿は100歳。中寿は80歳。下寿は60歳。と書いています。本文の中に、(人の命は我にあり、天にあらず)と、有ります。自分自身での健康管理こそが、大切であり、中国の、四書五経などに出てくる、健康法をまとめた本です。
第1巻 総論の上 で最初に書かれているのは、
人間は誰しも、父と母と大自然の恵みを受けて生を受けます。
自分の身体は、自分だけのもののようであっても、ひとりだけで存在するものでは有りません。この世界からの授かり物であり、父母が残してくれた身体なのだから、大切にして永く健康を保つように心がけなければいけません。
自分の身体に備わっているものは、皮膚や毛髪でさえも、父母からもらったもの、理由もなく傷つけるのは、親不孝といえます。
まして、生命を自分だけのものと考えて、好き勝手に不健康な振る舞いをして、身体を病んだり、早世したりするのは、父母への最大の不幸であり、とても馬鹿げた事としか言いようがありません。
健康で長生きして、親孝行をすること。そして、出来るだけ幸福に暮らすことは、誰しも望む最大の願いでしょう。健康で長寿を保つ方法を知って、それを実践することが、人生で最も大切なことといえます。人生は、大いに楽しむべきです。とはいえ、たとえ大金持ちになっても、短命なのでは仕方が無い。財産をどんなに増やしても健康や寿命は買えません。正しい健康法を知って、元気で長生きすることの方が、はるかに大きな幸せです。
こんな書き出しから始まって、健康を保つ方法や、考え方などが書かれています。例えば、(禍は口から出て、病は口から入る)と有りますが、(口は禍の元)ですから、言葉に注意ですが、忠臣蔵の時代に、自分の体は食べ物によって、作られますが、食べ過ぎや、食べ物の偏りによって、病気になることを注意しています。
子供の頃、北枕で寝てはいけないと、言われて育ってきましたが、どの方向に寝たらいいのでしょうか。また、なぜ北枕がいけないのでしょうか。
養生訓では、天地のエネルギーは、東から回ってくるので、東枕で寝ると、天地のエネルギーを吸収しやすく、元気に成れると書かれています。また、北枕については、死の気は、北から廻って来るので、死の気を避けるために、北枕は良くないと書かれています。
この時代は、鎖国の時代です。長崎で、オランダと中国だけが、交易が認められていました。文化も医学も、東洋だけでした。東洋医学と、西洋医学の違いは何でしょうか。西洋医学は、細分化の科学ともいえます。顕微鏡が開発されて、何でも細かく見て、原因を探していきます。微生物や、細菌が見つかり、病気の原因もどんどん発見されて、治療薬もどんどん開発されています。そのお陰で、悪い所を手術で取ってしまったりして、治す事ができるようになりました。
東洋医学では、体の中に、血の流れと、水の流れと、気の流れがあり、その流れのとどこう滞る所に、不快感が起こり、そこが数年後に病気になると考えます。ですから、薬も、その人の症や、質により調合されます。不快感を放置せずに、もんだり、針をうったり,お灸を据えたりします。気の流れを、良くすれば、病気の予防になると考えます。病気になってしまったら、病院の先生にお世話になりますが、予防を考えるならば、東洋医学も参考にしてはいかがですか。
私たちは、日常使っている言葉に、気という言葉が多く含まれています。病気、天気、元気、正気,狂気、
(病は気から)と、言う言葉を、誤解している人がいます。気の流れに異常があると、病気になるので、気を晴らして、前向きに考えて、気が滞らないように、塞ぎ込まないようにして下さい。という意味だと考えます。気が病んでくると、病気になり、気が元に戻って充実することを、元気といい、天の気がいいとか、悪いとか、言うし、気の持ち方や、気の使い方,気を使った言葉には、事欠きません。
体の中の、気の流れが、スムーズに流れてないと、故障の原因になります。同じところにじっと座ったままだと、気も流れが滞り、よくありません。正座は、背筋がピンと伸びて、気の流れに良い座り方ですが、膝に問題のある人は、正座は良くありません。座禅を組むときも、正座のように背筋を伸ばして座るのも、気の流れの為だそうです。
第2巻 総論の下 の書き出しは、
朝は早く起きて、手と顔を洗って、髪を整え、トイレに行って出すものは出す。一日のうちで朝の気が最も良いとされています。早朝が最も清らかで、清らかな気を室内に入れるために喚起をしましょう。自分の部屋を掃除して、清潔にして、整理整頓しておきましょう。よく、快食、快眠,快便、といいますが、健康のバロメーターです。食事がおいしく食べられて、よく眠れて、お通じがあれば、とりあえず健康です。
食後は、座りぱなしでいるのは避けましょう。横になって眠るなどもってのほか、眠ってしまうのは消化に悪いし、病気と肥満の元だと、書いてあります。食後は常に300歩ほど歩きなさい。たまには6〜7分くらい歩くともっと良いと書かれています。
食事についても、肉は控えめにしなさい。とか、腹八分目にしなさい。とか、アルコールも控えめにして、酔っ払うほど飲んではいけません。とか、いろいろと注意がたくさん書いてあります。
養生法の要点は、食べ過ぎないこと、身体に悪いものは食べないこと、性欲を慎むこと、感情に振り回されないこと、の4点が挙げられています。
飲食の欲、好色の欲、睡眠の欲、と、怒り、悲しみ、憂い、の感情を、身体の内側の敵といっています。特に、食欲と性欲は、外敵を連れて来るから恐ろしいといっています。内側から敵に勝つには、心を強くして、忍耐すること、我慢する事が肝要です。
第8巻 最後の巻は、養老がテーマです。
若い人には、人は年を取ると、子供に還るので、子供を養うように気をつけなさい。と、言っています。
高齢者自身に向けての注意が、いろいろと書かれています。年を取ると、怒り易くなる、欲が深くなる、人を咎めて、節度を無くし易くなるので、自制して、怒りと欲をこらえて、人を責めないようにしないと、心を乱して、自分自身の気を減らします。
呼吸は静かに、言葉は少なく、寝起きや、歩行や、動作は静かに行い、後悔もほどほどにして、周囲の人々が、思い通りにならなくとも、凡人だからとあきらめて、相手の過失を許すことが、自分の健康のもとだと書いてあります。70歳を過ぎてからは、1日を10日と思い、毎日毎日を、楽しむことを心掛けなければいけません。高齢者の楽しみは、世俗の楽しみではなく、心が本来持っている楽しみを大切にしましょう。
春夏秋冬,四季の移ろいを、楽しみ、山や川の景色の変化を楽しみ、草木や畑の野菜の移ろいを楽しみましょう。天気のいい日には、外へ出てゆったりと歩き、心と体の健康を、保つ工夫を心掛けましょう。そして、体調が悪くなったら、まず、食事療法をして、それで回復しなければ、薬を飲むように書いてあります。病気の無いときは、穀物や肉類で栄養を摂る方が、上等な薬よりも効果的といっています。特に、高齢に成ったら、本当に素材が良くて、美味しいものを、少しずつ食べるのを薦めています。口が喜ぶ食事をたくさん食べてはいけません。胃腸の喜ぶ食事を少しずつ食べるのが健康にいいと書いてあります。簡単に養生訓の抜粋をまとめて見ました。健康は人任せで、保てるものではなく、自分自身で日々の積み重ねで達成される物です。昔から、健康に良いと言われている物を食べて、適度に運動をして、年齢相応の楽しみを見つけ、ストレスを溜め込まずに、自分自身の感覚を大事にして、明るく、楽しく、日々を過ごすことが、骨折予防にもなり、健康寿命を延ばすことにもつながります。
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